佐保 | 美和さんが当初から一貫して変わらないのは、「自分が心地よいと感じるかどうか」。それが行動を決める上で、美和さんのはっきりした「ものさし」になっていますよね。自分が何をしたいのか、自分が何をしたらハッピーに感じられるのか、そういう自分の思いに正直に向き合ってみるということが、すごく大事なんでしょうね。 チェンマイに暮らしていると、私もほとんど日本の情報をシャッターアウトしている状態です。自分が関心のある情報だけ、インターネットなどで選び取ってチェックする。ところが、日本にいると情報洪水の中に投げ込まれちゃう。電車に乗っても、街を歩いていても、もうあたり構わず情報がどんどん目や耳に入ってくる。 |
名取 | チェンマイに住んでいると、わたくしの情報なんてたまに見るNHKくらいかしら。以前は、一時、BBCとかも見てたけど、もうそれさえもいいっていう感じ。私はここでできることしかできないわけだから。それだったら、少なくともここでできること、ここから発信できることをやっていけばよいわけだし。 |
佐保 | ある程度、事前に情報を集めることはもちろん大事。でも情報に振り回されないためにも、どの情報が自分に必要で有益な情報かを選別する作業が必要なんです。それを選別するには、自分がやりたいこと、自分の考えを自分でわかっていないといけない。まずは「自分の正直な思い」に耳を傾けることから、始めるのが大切ですよね。中心軸はまず自分。ところで今の美和さんにとって、バーンロムサイってどういう存在なんでしょうか? |
名取 | 今のわたくしにとっての核ですね。確かに核になっていると思う。その核というのは、昔はそれこそ自分の子どもと思っていたのが、今、ちょっとおばあさん的な立場になったけど、やはり悪戦苦闘して育ててきた子どもたちだから可愛いですよ。 今後はバーンロムサイが発展してほしいとかじゃなくて、このままで良いとも思っています。今の状態がきちんと維持されていくことがまず大事ですから。一番小さい子がちゃんと命があって、何らかの形で社会に出てくれれば、それでよいと思う。 |
名保 | 美和さんにとって、バーンロムサイは「大きな家族」という感覚は今も変わらないですか。 |
佐取 | それは変わらないですよね。でも立場が自分でおむつ替えるお母さんから、「もうそろそろ、おむつ替えたら」って言ってあげる、おばあさんになったかなって言う気がしていますけど。 |
2009年に開設10周年を祝ったバンロムサイ。お祝いのパーティーのフィナーレで、バンロムサイスタッフによる手作りの特大サイズの熱気球が上げられた。みんなの願いをのせて、熱気球が夜空に高く高く上がっていった。 |
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佐保 | 開設10年でおばあさんになるって言うのは、ちょっと早いような気がしますけど(笑)。 |
名取 | そう、もう丸10年が経ったんです。本当、時間の経過とともに、いろんなことが変わっていくなって改めて感じています。 |
佐保 | そうですね。時間が解決してくれることもありますからね。これから5年後くらいの美和さんの話を、また「日刊チェンマイ新聞」で聞いてみたいなあとも思います。そのころ、美和さんがどんな話をされるかが楽しみです。 |
名取 | どうなっているんでしょうねえ。おばあさんじゃなくて、「ひいおばあさん」の気持ちになっていたりして。「もう、みんな勝手にせい」なんて、言ってたりしてね(笑)。 |
佐保 | そう、5年後とはいわず、いろんな機会を通じて美和さんのお話がまた聞けるのを楽しみにしていますね。とにかくバーンロムサイの子どもたちが無事に成長して、きちんと社会に出ていけることを願っています。今回はいろいろと面白いお話や率直なご意見、ありがとうございました。 (The End ) |
<「アジアに生きる女たち/名取美和さん」最終回によせて> |
日本を離れてアジアで輝く女性たち、“いい気”と“元気”のお裾分け。
〜ホスト役:佐保美恵子(ノンフィクションライター)より〜
2004年、私がここチェンマイに移り住んで以来、北タイを中心に国籍、職業、年齢を超えて、おもしろい出会いがたくさんありました。
なかでも印象的なのは、日本を飛び出して海外で働く女性たちが輝いていること。
デザイナー、アーティスト、研究者、ビジネスウーマン、通訳、NGOスタッフなど職業はさまざま。
言葉や習慣の違いなどのハンディ、失敗を乗り越えながら、彼女たちは自分の可能性にチャレンジして、海外で自分らしい生き方を見つけています。
そして不思議なことに、みんな一生懸命だけど表情が穏やかで、彼女たちのまわりには爽やかな風が吹いているのです。
それは欧米が舞台ではなく、ちょっとスローライフで人も心優しいアジアが活動の舞台だからかもしれません。
そんな女性たちを訪ねて、日本を離れるまでのこと、海外での仕事や活動のこと、苦労話、これからの夢などを対談スタイルで伺っていきます。
さあ、彼女たちから “いい気”と“元気”、お裾分けしていただきましょ!
なかでも印象的なのは、日本を飛び出して海外で働く女性たちが輝いていること。
デザイナー、アーティスト、研究者、ビジネスウーマン、通訳、NGOスタッフなど職業はさまざま。
言葉や習慣の違いなどのハンディ、失敗を乗り越えながら、彼女たちは自分の可能性にチャレンジして、海外で自分らしい生き方を見つけています。
そして不思議なことに、みんな一生懸命だけど表情が穏やかで、彼女たちのまわりには爽やかな風が吹いているのです。
それは欧米が舞台ではなく、ちょっとスローライフで人も心優しいアジアが活動の舞台だからかもしれません。
そんな女性たちを訪ねて、日本を離れるまでのこと、海外での仕事や活動のこと、苦労話、これからの夢などを対談スタイルで伺っていきます。
さあ、彼女たちから “いい気”と“元気”、お裾分けしていただきましょ!
第1回シリーズのゲスト:「バーンロムサイ」代表・名取美和さん
1946年東京生まれ。1962年、ドイツに留学して商業デザインを学ぶ。帰国後、雑誌や広告の仕事に携わり、1966年に再びヨーロッパへ。1969年、長女を出産。以後、ときには子連れで日本とヨーロッパを往復しながら、通訳やコーディネーターとして活躍。東京・六本木で西洋骨董店を営んだのち、1997年にタイ・チェンマイへ。インテリア小物のデザインや制作をしながら、1999年からチェンマイでHIVに感染した子どもたちの施設「バーンロムサイ」の開設に取り組んで、その代表として活躍中。
27/10/09 | ①ヨーロッパは緊張感、アジアには心地よさがある。 |
03/11/09 | ②チェンマイで暮らすのは、“夏休みを惜しむ感じ”。 |
10/11/09 | ③「リズムのある暮らし」って大事だと思う。 |
17/11/09 | ④アジアって“程よい温泉感“がある。 |
24/11/09 | ⑤居場所をさがして、50代でチェンマイへ。 |
01/12/09 | ⑥誇り高き、孤独なノマド |
08/12/09 | ⑦バーンロムサイも、もう開設10年! |
15/12/09 | ⑧経済的自立=最初からぶれないポリシー |
22/12/09 | ⑨支援者による新プロジェクト『サイトーン』 |
05/01/10 | ⑩忙しい時期があって、当然だと思う | 12/01/10 | ⑪ちょっと口うるさいおばあちゃん? |
19/01/10 | ⑫何事もキレイにかっこよくやりたい。 |
26/01/10 | ⑬青い空、夕焼けの光、穏やかな山並…、 チェンマイで感じる小さな幸せ。 |
02/02/10 | ⑭「覚悟」を決めて、アジアで自分の可能性にチャレンジ。 |
09/02/10 | ⑮自分の感覚を信じて夢を追う |
16/02/10 | ⑯「自分の正直な声」に耳を傾ける。 |
⑯「自分の正直な声」に耳を傾ける。